大学・高専講師事例(技術者倫理)

 

大学における技術者倫理授業実施など

2014-4-9

               大来雄二(IEEJプロ、金沢工業大学) 

私は非常勤講師として、いくつかの大学で技術者倫理科目を担当しています。

千葉大学では、次に示すシラバスによって講義しています。

 http://syll.eng.chiba-u.ac.jp/ca/kam/T1R_T1R059001.shtml

 

放送大学の面接授業のシラバスは、次の通りです。

 http://syl-web1.code.ouj.ac.jp/ouj-f261/dt-16373.html

 

他にもいくつか担当していますが、最新版(2014年度版)のシラバスが確定している2大学の内容を紹介しました。

 

なお、技術者倫理科目については、日本工学教育協会にモデルシラバスを策定する動きがあり、現時点では次に示す学習・教育目標を公開しています。ご参考になれば幸いです。

 https://www.jsee.or.jp/taikai/workshop/?action=common_download_main&upload_id=1238

関連情報に興味をお持ちの方は、「日本工学教育協会 技術者倫理 モデルシラバス」でググってみてください。

 

IEEJプロで、技術者倫理科目を担当している先生が集まり、自分の教育法や教材を紹介しあって、授業改善につなげたら、おもしろそうですね。

 

以上

 

技術者倫理の講義体験から

 柴﨑一郎
(IEEJプロフェッショナル)


第1話:教育の目的と先輩の活躍の歴史

最近、大学で理学や工学系の学生に教える技術者倫理という講義を頼まれた。技術者倫理は、大変な準備が必要な講義である。最初は、何を話せばよいか大変迷った。迷ったでは講義が出来ないので何とか準備をして講義した訳であるが、幾つかの印象を述べてみたい。

筆者は、講義の最初に、「教育の目的は、皆さんが社会に出て活躍する為の準備です」と述べる。どこかの会社に就職するための教育ではなく、「入社してから活躍するための教育です」と言っている。

更に、勉強しない学生は会社では要らない。1年以上前から就職活動で勉強に身が入らない学生は会社に来てほしくない。3 月31日の午前中まで勉強し、午後の半日を就職する為に会社訪問に来たという学生が理想とも述べ、そうした学生を採用したいとも述べた。しかし、そんなこと初めて聞くという学生が多く、就職希望の会社名は重要でも、卒業後どの様な活躍をして世の中に貢献するのか、具体的な仕事への希望や志しは、重要視していないという印象も感じた。そのようなことから、筆者は、社会が皆さんに期待することは、会社に入社することではなく、「入社してから社会から感謝される様な大活躍をする」ことですとも言っている。

筆者は、講義の中で、我々の多くの先輩技術者がどの様な志や思いで、これまで働いてきたか、人物の例を挙げて話している。また、社会に出た時、どのようなことに遭遇するかをあまり堅い話はしないで率直に現実を語っている。

1例であるが、過去百数十年、幕末、明治維新以来、アジアに於ける新興国として技術立国を目指した日本は、当時の国際関係から不幸にも幾つかの対外戦争を経験した。戦時下の経済など、現在と比較すれば豊とは到底言えない時代であり、若者が戦争で命を失う可能性が極めて高い時代であった。そうした時代が終ったのは、太平洋戦争の終了した1945年の8月15日である。この日を境に、日本人の歴史で初めて、戦争による生命の危険が去り、その意味では大変素晴らしい時代の幕開けである戦後といわれる時代が始まった。戦火で町は焼かれ、仕事もなく、食料も十分でない状況であったが、我々の先輩諸氏(学生諸君から見たら祖父母であろう)は、必死の努力を重ね、多くの人が働ける仕事を創り、工場を造り、高度成長といわれる時代を経て、戦争の無い、豊と思える時代、即ち、家電、テレビ、ビデオ、自動車、新幹線、最近のパソコン、インターネット、持ち家等の欲しいものが手に入る時代を実現した。そうした過程で、技術や科学教育の大切さが認識され、次の時代を背負う多くの若い人が大学で高度の専門教育を受ける門戸も拡がった。そうした経緯や歴史を若い人に伝えることも大切であろう。

筆者の様なシニア技術者の責任かとも思い講義で語った次第である。

(IEEJP HP 用原稿 2014.3.9、第1話完)
 

第2話:社会でどの様な活動が必要とされるか?

長く会社で技術開発に関わった経験からであるが、技術の応用は、良い面を見て実施するが、負の面もある。今や、この負の面を如何にしてミニマムにするかが技術者にとって重要な時代となっている。至る所で、大気汚染に始まり、環境負荷低減や省エネルギーが叫ばれ、技術の応用における負の面が顕著になり、今や技術者倫理が必要となった時代であるとも言えよう。

此度の、巨大地震による原子力発電所の事故は、発電所を造る技術は在ったが、災害対応も含めて安全に利用する技術が未熟だった証である。我われに何が欠けていたかを率直に熟慮、反省し、新たな希望を見出す必要があろう。

電気学会でも技術者倫理の議論がされ、綱領も作成された。その内容は、我々技術者が当然守るべき事であり、知っておくべきことである。しかし、若い学生への情報としては、そうした綱領を読めば充分とは思われない。若い技術者たちが社会で活躍するための夢や事例が書かれていない。高度成長の時代に会社に勤務した、筆者の体験は、研究開発の目的は、社員=国民が働ける仕事を創ること、売れるものを開発し、工場を作り、社員=国民が働き暮らしを豊かにする=戦後日本人の夢の実現である。しかし、この単純な、

「製品を作(造)って売る」ということが、現実は理想とは大きくかけ離れ、うまく行かない。ライバルとの競合もある。作ったものが売れない。挫折や紆余曲折は日常である。物作りは、大変厳しい会社生活を要求する。研究が上手く行って、工場で物造りを始めれば、不良品の山とクレームに責められ、悔しい、悲しい、心配、不眠不休の、休日もない日々が続く。しかも、ビジネスの段階で、自然淘汰という厳しいスクリーニングを受けて勝敗の結果が出る。しかし、振り返ると少しは幸せもあった。開発した製品が予想外に沢山使われた。社会で役立つ物が創れたことが35年の物作り会社人生で最も嬉しいことであり、この様な物作りの体験も語った。

もう一つ講義でいつも語ることがある。オムロンという会社を創業した技術者立石一真氏は、「会社は社会の公器である」と語っている。この言葉を見て筆者は大変驚いた。素晴らしい経営者と思った次第である。成るほど、社会に貢献することがあって初めて会社は、収入を得て経営が成り立つ。そして働いた社員の給与も支払える。若い人が会社に入社したら、社会に貢献する活躍を期待する。当然のことである。

講義を聴く学生諸君には、「教育は君たちが社会に出た時に活躍する為にある。科学や技術を学んだ人は、学ばない人が出来ないことが出来る。知恵が科学や技術を生み、

技術は人類の希望や夢を実現する。」

1. 夢を持とう

2. 夢を実現する努力をしよう

3. 夢を実現しよう

夢が有れば知恵は無限に生まれる。一人ひとりが夢を持った社会が大切である。そして、技術者は社会の公器である。

この様な事を筆者が語る資格があるかどうかは別にして、語った次第である。

(IEEJPHP 用原稿 2014.3.9第2話完)

以上

 

 


技術者倫理教育について

関 井 康 雄

(元千葉工業大学教授、IEEJプロフェッショナル)

 

筆者は1994年4月~2007年3月の13年間千葉工業大学の専任教員として電気工学について学ぶ学生の教育に従事した。同大学では「技術者倫理」という講義科目を設け、技術者倫理に関する教育を実施しているが、この科目の特別講義を依頼され、2011 年11 月に「技術と技術者」と題する講義を実施し、技術者倫理について講義した。その概要について紹介する。

1、講義内容

特別講義では、① 科学と技術、② 電気技術者、③ 技術士資格を持つ先輩の活動紹介、および、④ 技術者倫理について説明した。 

2、「科学・技術と技術者」について

「科学・技術と技術者」では科学と技術の相違、技術が抱える倫理的な問題、技術の担い手となる技術者の役割や責務、電気技術者の活動分野と業務内容などについて説明した。加えて、千葉工業大学技術士会に所属する3 名の方々(2 名の土木工学科卒業OBと1 名電気工学科卒業OB)の事績を紹介し、それらのOBから学生諸君へのメッセージを披露した。併せて先人の残した格言などに触れながら技術者として研鑽すべき事柄ついて説明した。 

3、「技術者倫理」の講義

「技術者倫理」では倫理の意義について説明し、技術者倫理について解説した。ここでは「技術者倫理」に関わる学習の内容や学習の方法、金沢工大における技術者倫理教育のカリキュラム、JR西日本の福知山線の事故や東京電力福島第一原発の事故など技術者倫理が関わる事例を取りあげ、問題となった事柄につて説明した。併せて、電気学会の倫理綱領について解説し、技術者として行動する上で心得るべき事柄の理解を深めることの大切さを説明した。 

4、講義でとくに強調した事項

技術者としての任務を果たしてゆくためには、技術のあるべき姿を理解し、技術者としての資質を高める努力を怠らず、技術者倫理に思いを馳せながら良心に恥じない行動を行ってゆくことが大切であることを説いた。


講義で用いた資料(パワーポイント)の例 

大学・高専講師事例(省エネルギー技術)

省エネルギー技術

寺嶋正之

(IEEJプロフェッショナル)

   IEEJプロフェッショナルとして実施した電気工学学生向けの講義「省エネルギー技術」について紹介します。この講義は電気学会の寄付講義の一環です。 図1は地球環境問題に関し国際エネルギー機関(IEA)が示した温室効果ガス(GHG)削減(CO2に換算)のシナリオで、同図中Reference Scenarioは各国政府が現在の政策や対策を全く変えなかった場合の全世界でのGHG排出量推定で、同図450 Scenarioとは大気中のGHGを現在各国間で合意されつつある450ppmに押さえこむシナリオである。2030年にはリファレンスシナリオに対してGHGを13.8Gt削減しなければならない。削減の対策は、①省エネルギー57%、②再生可能エネルギー&バイオ燃料23%、③原子力10%、④CCS(CO2の回収・貯留)10%で、排出削減には省エネが最も効果的で6割近くを占めている。 

 こうしたことを背景に省エネの重要性は強く認識され、電気学会に寄付講義の申込みがあり、企業出身の筆者が非常勤講師をお引き受けした。対象は高専電気工学科4年生、授業時間は90分×15回である。

 講義の目的:

①「電気工学」と「地球環境・エネルギー」との深い関わりを学び、 地球環境対策としてエネルギー利用面(消費面)からの省エネルギー技術を理解する。

②省エネ技術の多くは,電気回路や電磁気の原理による省電力化・高効率化であり,それらの具体的な実施策を学ぶと同時に、高専で学習する電気技術を社会の実務にどのように応用するかを理解する。

③再生可能エネルギーの概要を学ぶ。

 授業項目・内容

1 地球温暖化とエネルギー問題

 ・地球環境問題と脱温暖化への取り組み ・日本のエネルギー及び環境問題と取り組み

2 さまざまなエネルギーの形

 ・エネルギーの形態 ・動力の基礎

3 動力の省エネを担う電動機技術

 ・電動機の特性 ・電動機の制御

4 電動力応用

 ・電動力応用例と必要なエネルギー ・電動力応用の省エネルギー

5 熱計算・電気加熱

6 空気調和・給湯、ヒートポンプとその応用

7 照明

8 再生可能エネルギー

 上記の項目から分かるように範囲が広く適当な教科書も無い、また現在急速に発展している技術でありできるだけ最新の技術を紹介したいため、授業はプリントを作り配布した。また、できるだけ具体例を示し演習を多くし理解を深めるよう努めた。本講義が受講学生の将来に役立つことを念じている。

 

中小企業支援例

中小企業の改善指導 


木村光夫
(IEEJプロフェッショナル)

 1. 中小企業経営改善指導事例

 私が指導したしました中小企業の事例を述べます。

A社:自走小型船舶の開発
        GPSと水深測定装置を備えた自走する小型の船。搭載するCPU
   に位置情報を入力すると自走し指定場所の水深を自動計測する。

B社:特殊機能無線タグの事業計画 
    特殊な機能を持った無線タグの用途開発と事業計画策定

C社:製品品質の改善
    金属製造業の体質と製品品質の改善

D社:経営体質の改善
    金属加工業の体質と製品品質の改善

E 社:製品品質の改良
    プラスチック製品品質改善と不良撲滅

F 社:環境改善 
    リサイクル業の周辺に影響する騒音などの改善

G社:仕組みの改善
    業務の流れの改善

 中小企業の改善指導をしています。日本の中小企業は世界を相手に戦える強い技術力を持っています。


2. 中小企業の事業環境 

  現在の事業環境は良いとはいえません。一例を上げますと以下です。 

 ・原材料価格・電力および燃料コストの高騰 

 ・海外生産シフトによる発注量減少 

 ・輸入資材の価格上昇 

 ・高齢化加速と人材不足 

3. 中小企業の抱える問題点の一例を以下に述べます。 

 ・責任と権限がはっきりしない 

 ・社長の経営方針が全組織に伝わっていない 

 ・設備投資計画は社長の腹(頭?)にある 

 ・高齢化、後継者に悩んでいる

 ・人材育成ができていない

4. 経営を改善する 

  企業は以上述べたような問題を抱えていますが、改善のポイントは以下です。 

 ・現場重視:
   すべての品質・品格は現場にある。
  技術・技能、製品の品質、
従業員の質、労働の質、設備の質、作業環境の質 

 ・人を尊重:
  それぞれの人が持っている見解や意見、異議がすべての改善に結びつく。

 5. 手法・手段 

  公的機関の助成制度や指導を受けて新製品の開発や、経営改革を行っている企業もあります。 

  ISO品質マネジメントシステム(ISO 9001)、ISO環境マネジメントシステム(ISO14001)には改善の手順と、継続的に改善を進める手法が示されています。

これを用いて問題を明確にし、経営改善をしている中小企業もあります。外部の機関に相談し改善指導を受けることも効果的です。

6. どのような知識が役立つか 

 私たちが中小企業の経営改善指導をする場合に役立つ知識は、現役時代に身に付けた知識・経験・技術・技能は勿論ですが、私の場合はこれまで7社の指導をしてきましたが、「ロジスティックス技術」、「環境リサイクル経験・技術」、「GPS位置追跡情報システム」、「個別識別技術のバーコード、無線タグ」なども役立っています。

 以上

テンプレート

 

この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば

 

2021年X月Y日

氏 名

ここに本文を記入

 

=====以下、この行から削除して決定をクリック=====

記入し終わったら<>をクリックしてhtml表示し、先頭行の

<p id="indication">&nbsp;</p> 

の id="indication" のindicationを好きな名前(ここでは仮にnameとします)に変更してください。
以後、本ページ内で、#name でリンクをとると、そのリンクからこの文章の先頭にジャンプします。

 

INDEX▲